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大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)6383号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

2 被告片山美樹

<証拠>によれば、片山林平は加害車の使用者として自動車登録されており、本件事故前日まで加害車を使用していたと認められる。

被告片山及び被告会社は、片山林平は、本件事故発生前加害車を被告谷口に譲渡していたから本件事故発生時には加害車の運行支配を失なつていたと主張し、<証拠>には、これに沿う部分がある。

しかしながら、<証拠>によれば、片山林平は、被告谷口に対し本件事故当日の約一年前から加害車を買取つてもらえないかと話をもちかけており、その後被告谷口が片山に金員を貸与したこともあつて、代金四〇万円で加害車を譲渡すということまで具体化しかけたこともあつたが、最終的に譲渡を合意するまでには至つていなかつたこと、被告谷口は、本件事故発生につき、片山林平が自賠法の規定する「他人」に該当しないと片山林平の遺族に自賠責保険金が支給されないと考えていたので、片山林平との間ではかつて前記のような加害車の譲渡話も出ていたこともあり、本件事故前の昭和五六年二月一八日には既に四〇万円で加害車の被告谷口への譲渡があつたことにし、その旨曽我良雄にも述べたものであること、なお、被告谷口は、自ら運転中に起こした事故の後仕末として加害車の廃車処理費用も支出したこと、<証拠>は昭和五六年八月二一日に、<証拠>は同月二八日に右のとおり被告谷口から加害車の譲渡話を聞かされた曽我が記載したものであり、<証拠>添付の領収証もその頃、片山林太郎が見つけ出した白紙の領収証を受取つた曽我が、昭和五六年二月一八日の日付印、その他の記載をなしたものであり、甲第六号証も昭和五六年一二月九日に曽我によつて作成され、被告谷口が押印したものであることが認められる。

<証拠判断省略>

右事実に照すと、従つて、片山林平は、本件事故発生時も加害車の保有者として自己の運行の用に供していたものであり、自賠法三条により、後記損害を賠償する責任がある。

被告片山美樹が片山林平の一切の権利義務を相続により承継したことは関係当事者間に争いがない。

3 被告谷口

原告らは、被告谷口が本件事故発生加害車を運転して自己の運行の用に供していたと主張するが、前記2のとおり、本件事故時加害車は片山林平が保有していたものであり、被告谷口は、本件事故当日午後一時半ころから釣旅行に同行した右片山林平らを同乗させ、大阪までの帰途運転するつもりであつたにすぎず、大阪に到着後加害車は片山林平に引渡すことになつていたのであるから、いまだ自己のために加害車を運行の用に供していたとは認められず、原告らの右主張は理由がない。

前記認定の事実によれば、被告谷口は、加害車を運転し、本件道路を走行するに当り、前方を注視し、加害車がセンターラインを越えて反対車線に進入することのないようにハンドルを的確に操作すべき注意義務があるのにこれを怠り、助手席にいた片山林平が居眠りをしてもたれかかつてきたところ、これを押し戻そうとして脇見をし、片手で不十分なハンドル操作をした過失により、加害車をセンターラインを越えて進行させ、本件事故を惹起したものと認められるから、民法七〇九条により後記損害を賠償する責任がある。

4 被告会社

請求原因2(三)(1)のとおり本件保険契約が締結されたことは関係当事者間に争いがない。

原告らは、本件約款第一章第四条①(1)の規定により、被告保険会社に対し、損害賠償金を直接請求するものであるが、本件においては右約款の規定する損害賠償請求権者の被告会社に対する直接請求権はいまだ発生していないと解せざるを得ないから、原告らの右請求は理由がない。

次に、原告らは、本件保険契約の被保険者である片山林平の相続人片山美樹の被告会社に対する保険金請求権の代位行使による請求をするが、本件約款第四章第一九条の規定及び本件保険契約の性質に鑑みれば、本件約款に基づく被保険者の保険金請求権は、保険事故の発生と同時に被保険者と損害賠償請求権者原告らとの間の損害賠償額の確定を停止条件とする債権として発生し、被保険者が負担する損害賠償額が確定したときに右条件が成就して右保険金請求権の内容が確定し、同時にこれを行使することができることになるものと解され、本件訴訟手続においては、原告らの被保険者の相続人被告片山美樹に対する損害賠償請求と被告保険会社に対する被保険者の保険金請求権の代位行使による請求とが併合審判されているのであるから、原告らの被保険者の相続人被告片出美樹に対する損害賠償請求を認容するとともに、被告保険会社に対する原告らの右保険金請求も、予めその請求をする必要がある場合として、これを認容する。

<証拠>によれば、被告片山美樹は無資力であることが認められる。

三示談成立について

被告片山美樹及び被告会社は、原告らは被告谷口との間で示談を成立させ、本件事故に関する一切の損害賠償請求権を放棄したものと主張し、<証拠>によれば、原告幸子と被告谷口との間で、昭和五六年一一月一一日示談書(甲第一三号証)が作成され、右示談書中には信安の相続人は、自賠責保険金四〇〇〇万円の受領及び同日被告谷口から一〇〇万円の支払を受けることにより、その余の一切の請求権を放棄する旨の記載があること、原告幸子は、同年八月一七日、和歌山地方検察庁副検事の電話照会に対し、当時受領していた自賠責保険二〇〇〇万円以外に被告谷口に対して慰藉料等を請求する積りはない旨述べていることが認められる。

しかしながら、<証拠>によれば、被告谷口は、本件事故につき被疑者として取調べを受け、さらに刑事訴追されたため、刑が減軽されることを願い、原告らに協力を依頼し、有利な情状証拠作成のため、原告幸子は、前記のとおり真意ではないのに取調べの検察官に対して被告谷口に対して慰藉料を請求する積りはない旨述べたこと、原告幸子と被告谷口名義で前記示談書も作成したが、同日、被右谷口は原告幸子宛に念書を作成し、右示談書が被告谷口の刑事裁判に提出することが目的であり、後日原告らの保険金請求手続に全面的に協力することを確認していることが認められる<証拠判断省略>。

(長谷川誠)

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